長雨だな、
やっと仕事でひと山越えた、
明日の山は明日考えよう。
仕事の同時進行が多いのは、
良くないな。
のんびり、
人気の無い映画館に、
映画でも見に行きたい。
むかし見た映画で、
「smoke」というのがあった。
主人公はハーヴェイ・カイテルで、
その他のキャストも個性的だった。
続編のブルー・イン・ザ・フェイスは、
イマイチだったが「バグダット カフェ」とか、
あの辺りの映画が好きな人は好むかもしれない。
smokeは、
ブルックリンの街角で、
小さなタバコ屋を淡々とを営む主人公が、
10年以上、毎日同時刻、同じ場所から同じ場所を
撮影するという習慣を持っていて、
そこから色々なストーリーが発生するんだが、
あれはとても面白い趣味だった。
これらブログもそうだけど、
現代程、個人が個人のアーカイブデータを
作成している時代は無かったと思うが、実は、
こうゆうアナログな手法の方がアーカイヴとしては、
「曖昧さや行間」があって、逆に鮮明なのかもしれないと、
個人的には思う。
曖昧さからの方が、
本質が見抜ける気がする。
例えば手書きの日記よりも
その人の一生分のレシートとかの方が、
実はリアルな人となりが残るのかもしれない。
今日、
デザインに使う資料を探そうと、
本棚をかき回していたら面白い写真が出て来た。
それは10年くらい前、
俺が桑沢デザイン研究所を退職する時に、
職員の方々からいただいた品々と一緒に入っていた、
ある古い写真。
恐らく、
今から約60年前の表参道の写真。
在職中にもらったか、
退職後にもらったのかは忘れたが、
とある写真家の方からいただいたモノクロ写真。
オリジナルからの精密な複写だった。
この年老いた写真家は、
桑沢デザイン研究所が創設された1950年代からの
渋谷を撮り続けていた。
その方から、
戦後間もない頃の渋谷の話、
今の桑沢の場所、つまり渋谷の公園通りを登り切った場所から、
表参道の同潤会アパートや山手教会が見えたというお話、
パルコがオープン仕立てのスペイン坂から渋谷駅までは、
瓦屋根の街並が広がっていた話、
渋谷の駅前の東急にロープウェイがあったんだか、
計画されていたんだか、そんな諸々を実際の写真も見せてもらったり、
年齢は物凄く離れていたんだけど、よく色々な事を話してくれた。
その写真家と話していた頃の自分は、
約10年前、25歳かその辺りだったと思うけど、
祖父の影響かもしれないが、異様に歴史が好きだった。
特に20世紀、この100年についての全ての文化。
そんな乱読の粗知識の中で、
GHQ統治下の渋谷、つまりワシントンハイツがあった頃の表参道を
臨時だか訓練用の「滑走路」として使っていたという話があって、
その事をよく話題に出して盛り上がったが、
その先生も「噂で聞いた事はある」とは言うものの
ついに確証は得られなかった。
でも、
表参道は明治神宮に対しての「参道」であるわけだから、
それをやったのは日本軍で無い事は確かで、やるとすれば米軍だった筈。
もしあったとすれば常用の滑走路というより、
「いたずらのような」touch&goを表参道でやったのかもしれない。
もしくは緊急時用とか。
代々木公園にあった米兵の為の街「ワシントンハイツ」
この頃に表参道にあったのは、
山手教会、平屋のキディーランド、そして同潤会青山アパート。
今の表参道ヒルズだ。
同潤会アパートの
「同潤会」は大正時代に起きた関東大震災で、
国内外から集められた義損金の中から支出された
お金で作られた「財団法人 同潤会」という当時最新の
住宅や都市計画を研究開発する機関として設けられた
ある種の研究団体の名称だった。
今では当たり前の設備の整った集合住宅を設計施工し、
代官山のアドレスが建つ以前にも「同潤会代官山アパート」があったし、
都内や千葉の一部を含め数十箇所にそれは作られた。
表参道の同潤会アパートの立て替えが決まり、
取り壊し後、再開発された後の模型、
つまり現在の「表参道ヒルズ」のお披露目式が、
取り壊される前の同潤会アパートで有り、
ある経緯があって、俺もそこに同席する機会があった。
その感想と意見を率直に述べ、
簡単なアンケートのようなレポートのようなものを
その場で提出すると。結構な有識者や地元の方も集まっていた。
もちろん、
安藤忠雄設計事務所のスタッフもいたわけだけど、
俺は「これは同潤会アパートの墓石ですね」と開口一番、
正直過ぎる意見を言ってもしまって、本心だったんだけど、
場が凍り付いたのを鮮明に覚えている。
それは、
あの年老いた写真家が大事にしていたモチーフだったという事もある。
同様の意見も
もちろん多数あった。
だからこそ、あんな惨めな形で右端の一部に、
以前の同潤会を付け足したのだろう。
手に持てるサイズのデザインも都市計画も、
そろそろ、スクラップ&ビルドが過去のシステムだ
という実感とシフトをして欲しいものだ。
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